第9回学術集会「医療におけるマネジメントの役割-コロナ禍における病院経営のサステナビリティ-」をメインテーマに、コロナ禍での医療機関の持続可能な経営の在り方について議論が交わされました。

2021年10月17日(日)、医療安全実践教育研究会第9回学術集会が、オンラインにて開催されました。今回は医療機関の存続発展に不可欠なマネジメントを取り上げ、「医療におけるマネジメントの役割-コロナ禍における病院経営のサステナビリティ-」をメインテーマに、様々な視点から講演、シンポジウム、一般演題発表が行われました。


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学術集会は、滋慶医療科学大学大学院 教授の和佐勝史先生に座長を務めていただき、「医療におけるマネジメントの役割-働きがいのある最高の組織作りに向けて-」と題した狩俣正雄大会長(滋慶医療科学大学大学院 研究科長・教授)による講演で開幕しました。働きがいのある最高の組織作りや医療機関におけるスピリチュアル経営の重要性が強調され、医療におけるマネジメントの役割は、環境の変化あるいは想定外の事態に対応して医療制度を有効に機能させ存続発展させることであるとお話しされました。


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続く特別講演は、浜松医科大学 医学部医療法学 教授の大磯義一郎先生に座長を務めていただき、同志社大学 政策学部・同大学院総合政策科学研究科 教授の太田肇先生より、「専門職の組織とマネジメント-病院と医療関係者を念頭に-」と題してご講演いただきました。医師や看護師などの専門職の組織に対する関わり方の特徴が理論的に説明され、専門職には、クライアントからの承認だけでなく、その能力や貢献度を正しく評価できるような、専門を同じくする上司や同僚からの承認が必要であるとお話しされました。


一般演題では、滋慶医療科学大学大学院 教授の飛田伊都子先生に座長を務めていただき、以下の2題が発表されました。
第1題は「新型コロナウイルス感染症患者受け入れ病院の法人本部の取り組みについて」と題する社会医療法人祐生会 法人本部人事課の田中龍也氏による発表で、新型コロナウイルス感染症の院内発生を経験した医療機関で行った、PTSD症状やうつ症状に悩む職員に早期対応できる、職員サポートに関する取り組みについてのアンケート調査の結果が示されました。
第2題は「専従医療安全管理者の業務と役割についての研究」と題する京都第一赤十字病院 医療安全推進室の中島聡子氏による発表で、専従医療安全管理者は、ビジョン構築、信頼構築、組織文化の構築、傾聴のコミュニケーション、情報共有、交渉、説得、リエゾンの8つの役割を果たしていることが示されました。



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基調講演では、滋慶医療科学大学大学院 学事顧問・特任教授の江原一雅先生に座長を務めていただき、社会医療法人明和会 医療福祉センター サステイナブル本部 人事統括主幹の竹中君夫先生より、「働き方改革と経営戦略-“あたりまえ”に取り組めば成功する-」と題してご講演いただきました。働き方改革での成功モデルや人件費コントロール、超過勤務対策等についての具体的な事例を紹介され、働き方改革を経営戦略として展開する時の主役はナースであり、新型コロナウイルスへの緊急対応でも中核的な役割を果たしているのは看護管理職であるため、彼らや彼女らが納得して前向きに行える施策を最優先すべきであるとお話しされました。


シンポジウムは、「コロナ禍における病院経営のサステナビリティ」と題して、各病院での新型コロナウイルス感染患者に対する取り組みが紹介され、活発な議論が行われました。座長は大阪府看護協会 会長の高橋弘枝先生と滋慶医療科学大学大学院 教授の宇田淳先生に務めていただきました。


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最初に、社会医療法人信愛会 畷生会脳神経外科病院 副院長の出雲幸美先生から、「コロナ禍での地域病院経営のサステナビリティ-患者も職員も安心な地域における病院として機能を維持する-」と題して、コロナ禍で勤務する病院の運営状況と取り組みが紹介され、今後の展望として、DX(デジタルトランスフォーメーション)の積極的導入が欠かせないとお話しされました。


次に、独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)大阪病院 看護部長の谷岡美佐枝先生から、「コロナ禍における病院経営のサステナビリティ」と題して、看護部として患者が満足し信頼される病院や、看護部が多職種を巻き込んで自律的に先導する役割が重要であり、今後もCOVID-19感染対応に勤しみ共存しながら、目標に向かって持続可能性を実現させることが課題であるとお話しされました。


続いて、大阪医科薬科大学病院 看護部長の中山サツキ先生から、「コロナ禍における特定機能病院の役割-看護管理者として二つの難局を乗り越えて-」と題して、COVID-19感染患者受け入れの取り組みと結果が紹介され、大学病院は高度医療の提供が使命であり、COVID-19重症患者の受け入れは当然の責務で、医療の緊急事態の中でその機能を十分発揮し続けるためには、各職種が医療者としての使命感と正しい知識を持ち、互いに尊重し合い効果的な役割を果たすことが極めて重要であるとお話しされました。


最後に、関西医科大学 法人理事・統括看護部長の安田照美先生から、「コロナ禍における病院経営のサステナビリティ-多様性のある組織づくりと可能性を支援-」と題して、COVID-19感染患者に対する取り組み状況と病院の経営状況が紹介され、人材育成のために法人直系の組織として看護キャリア開発センターを設置し、それが同大学の教育・臨床看護実践の質保証や、医療の安全や質の向上だけでなく、多様な生き方を支援する働き方改革にも繋がるとお話しされました。


その後のディスカッションでは、COVID-19の第1波から第5波までの対応におけるリーダーの役割の重要性、危機的状況でのコミュニケーションや信頼関係の重要性、コロナ後の医療の在り方、AI導入の課題等について、各シンポジストと座長の間で活発な議論が行われました。


閉会の挨拶として、木内淳子代表世話人から、オンラインによる学術集会が無事に終了したことへの参加者、演者、座長をはじめ運営スタッフに対する協力のお礼が述べられました。また、医療におけるマネジメントの重要性が再認識されたとのお話がありました。


最後に、2022年10月16日に第10回学術集会が開催されること、次期大会長として滋慶医療科学大学大学院 教授の石松一真先生が担当されることが紹介されました。石松教授より、次回は医療における人を中心に展開するとのお話があり、本学術集会は盛会のうちに終了しました。

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