第8回学術集会「医薬品安全管理と多職種連携-急性期から在宅まで-」をメインテーマに、医療に不可欠な医薬品の安全管理と医療安全教育の実践について議論が交わされました。

2020年10月18日(日)、医療安全実践教育研究会第8回学術集会が、オンラインにて開催されました。今回は医療に不可欠な医薬品を取り上げ、「医薬品安全管理と多職種連携-急性期から在宅まで-」をメインテーマに、様々な視点から講演、シンポジウムや一般演題発表が行われました。


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学術集会は、大石雅子大会長(滋慶医療科学大学院大学 教授)の開会挨拶の後、滋慶医療科学大学院大学 教授の和佐勝史先生に座長を務めていただき、「医薬品の特徴とリスク-医療安全を支える医薬品安全-」と題した大石大会長による講演で開幕しました。医薬品の特徴やリスクポイントが概説され、急性期から在宅まで医薬品をめぐる多職種連携や情報共有の重要性についての本学術集会の流れが示されました。


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続く特別講演は、浜松医科大学 医学部医療法学 教授の大磯義一郎先生に座長を務めていただき、労働者健康安全機構 理事長の有賀徹先生より、「医療安全と臨床倫理-今後の医療のあり方など-」と題してご講演いただきました。医療安全と倫理の基本的な規範・理念から医療安全の新しい考え方への展開、資源の配分まで、含蓄のある視点をご教示いただきました。


一般演題では、大阪府看護協会 会長の高橋弘枝先生、滋慶医療科学大学院大学 研究科長・教授の狩俣正雄先生に座長を務めていただき、以下の2題が発表されました。


1題目は「内服関連業務におけるエラーの生起と回避に関するシステム分析-持参薬・退院処方薬・入院処方薬の比較-」と題する大阪府済生会 大阪整肢学院の橋本世子典氏の発表で、内服薬の病棟での服薬行程を詳細に解析し、エラー生起のプロセスについてお話いただきました。


2題目は「特定機能病院における高齢者誤嚥性肺炎に影響を及ぼす薬物療法の現状調査」と題する大阪大学医学部附属病院 薬剤部の渡邊梓氏による発表で、外来処方データを用いた誤嚥性肺炎の薬剤性リスクについての解析についてお話いただきました。


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基調講演では、近畿大学病院 安全管理部 教授の辰巳陽一先生に座長を務めていただき、大阪大学医学部附属病院 薬剤部長・教授の奥田真弘先生より「多職種チーム医療における情報共有と医薬品の安全使用」と題してご講演いただきました。医薬品安全性の確保には、多くの専門職が情報を共有し、それぞれの役割を適切に発揮することが求められることから、チーム医療の進展が必要であり、薬剤師の役割として医療機関と薬局の情報共有の充実が重要であることが示されました。


シンポジウムは、大会のメインテーマである「医薬品の安全使用と多職種連携」に沿って、医薬品安全性情報の発信収集の起点から、急性期医療機関、回復期リハビリテーション医療機関、在宅医療への連携拠点まで、様々なステージでの現状や取り組みの紹介が行われ、活発な議論が行われました。座長は滋慶医療科学大学院大学 学事顧問・特任教授の江原一雅先生と大石大会長が務めました。


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第1席は、医薬品医療機器総合機構(PMDA) 安全性情報・企画管理部 リスクコミュニケーション推進課長/医療安全情報室長である田島康則先生から「PMDAにおける医薬品の市販後安全対策」と題してお話しいただきました。PMDAの基幹業務のご紹介と市販後安全対策や医療安全情報の発信についてお話しいただき、HPであるPMDAメディナビをご紹介いただきました。


第2席は、北里大学病院 医療の質・安全推進室 副室長で看護師・薬剤師の資格をお持ちの荒井有美先生から「チームで防ぐメディケーションエラー-専門性の相互理解と共有-」と題してお話しいただきました。多重課題に直面する医療現場において、各職種が医薬品の知識を深めることが重要で、多職種のコミュニケーションを図り、製薬企業を含めて連携することの重要性が示されました。


第3席は、伊丹恒生脳神経外科病院 薬剤部長/医療安全管理室長の曽和鮎美先生から「回復期から在宅における医薬品安全に関する情報共有-薬剤師の視点から-」と題してお話しいただきました。地域の医療機関同士や薬局あるいは施設との双方向での情報共用の取り組みについての事例が紹介され、ポリファーマシーを防ぐ薬剤師によるリスクマネジメントの有用性が示されました。

最後に、伊丹恒生脳神経外科病院 地域医療連携室 室長で看護師の塚本知恵子先生から「医薬品管理という視点で見た多職種連携-地域とともに育ち合う地域医療連携室を目指して-」と題してお話しいただきました。医療機関における地域連携室の重要性を実例と併せて紹介すると共に、十分な職種連携により地域支援を充実すべきことが示されました。


その後のディスカッションでは、医薬品の使用の際には安全性情報の充実と企業を含めた多職種連携が必要であること、また地域包括ケアシステムの推進には多職種連携や情報共有が重要であり、教育の必要性についても充実した議論が行われました。


閉会の挨拶として、木内淳子代表世話人から、初のオンラインによる学術集会が無事に終了したことへの参加者、演者、座長をはじめ運営スタッフへの協力のお礼が述べられました。また医療安全における医薬品安全管理の重要性が示され、地域包括医療の充実には多職種連携と教育が改めて不可欠であることが再確認されたとのお話がありました。

最後に、2021年10月17日に第9回学術集会が開催されること、次期大会長として滋慶医療科学大学院大学 研究科長・教授の狩俣正雄先生が担当されることが紹介されました。狩俣教授より、次回は医療に関するマネジメントを中心に展開するとのお話があり、本学術集会は盛会のうちに終了しました。



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